あせも(汗疹)
原因は?
汗を出す管(エクリン汗腺)がなんらかの原因で詰まり、管の中で汗が留まってしまい、炎症を起こした状態をあせも(汗疹)と呼びます。
どんな皮膚症状?
赤い丘疹が生じてかゆみや軽い痛みを伴う湿疹(紅色汗疹)や、小さな白っぽい水ぶくれができる湿疹(水晶様汗疹)などを認めます。額、髪の毛の生え際、首まわり、背中、おむつに覆われた部位などに認めます。
診断は?
症状から診断します。特別な検査は必要ありません。
治療は?
予防が重要です。
予防方法:高温多湿環境を避ける、衣服を着せすぎない、汗を拭きとる、可能であればまめに汗を洗い流す/下着を着替える。必要に応じてステロイド外用薬を塗布します。
乳児湿疹
乳児湿疹って何?
乳児湿疹という病名はなく、あかちゃんの肌トラブルを総じて「乳児湿疹」と呼ばれることがあります。
あかちゃんの肌トラブル(通称 乳児湿疹)には…
☆ 新生児ざ瘡
☆ 乳児脂漏性皮膚炎(乳児脂漏性湿疹)
☆ 皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹
☆ 接触性皮膚炎(よだれかぶれ・おむつかぶれ等)
などがあります。
(乳児湿疹という保険病名はあります)
新生児ざ瘡
生まれたばかりのあかちゃんの顔にニキビみたいなものがたくさんありますが、病気ですか?
積極的な治療が必要な病気ではありません。
あかちゃんの顔にもニキビができることがあり、あかちゃんのニキビを新生児ざ瘡と呼びます。
あかちゃんの20%に認めます(男の子に多いのが特徴です)。
生後2週頃より発症し、生後数か月以内に自然に消失することがほとんどです。
原因は?
胎盤を介してあかちゃんへ移行したママのホルモンの影響を受け、あかちゃんの皮脂の分泌は盛んです。
この皮脂腺の分泌が盛んなことが原因で、あかちゃんにニキビが生じると考えられています。
また、皮膚の常在菌(マラセチアなど)による炎症が原因とも考えられています。
治療は?
適切なスキンケアによって、通常2~3週間程度で改善します。
1日1回は入浴して、よく泡立てた石鹸(もしくは泡状の石鹸)を用いてしっかり洗うことが大切です。
詳しいスキンケア方法に関しては当院受診時にご相談ください。
おむつかぶれ
おむつかぶれとは?
おむつでむれたり、皮膚に残った尿・便の成分が刺激になって皮膚がかぶれたものです。悪化すると、皮膚がただれて(びらん)、痛みや痒みが生じたり、出血することもあります。
診断は?
臨床症状から診断します。
治療は?
スキンケア(拭きすぎない/よく洗う/こまめなおむつ交換など)・軟膏塗布(ワセリンや亜鉛華単軟膏)で治療します。炎症が強い場合、ステロイド含有軟膏を使用することもあります。
おむつかぶれが治りません…
カンジダ皮膚炎かもしれません。おむつかぶれによく似た症状(陰部・臀部の発赤やびらん)を認めますが、治療内容が異なります。
カンジダ皮膚炎とは、カビの一種であるカンジダが原因で起こる皮膚炎です。おむつ皮膚炎と区別するポイントは、しわとしわの間など(尿や便が接触していない部分)にまで炎症が起こっていることです。おむつかぶれにカンジダ皮膚炎が合併していることもあります。カンジダ皮膚炎には抗真菌薬軟膏(カビ用)を使用します。
とびひ(伝染性膿痂疹)
原因は?
黄色ブドウ球菌やA群β溶血性レンサ球菌などの細菌が原因です。時に多剤耐性黄色ブドウ球菌が原因となります。湿疹、虫刺されや小さな傷口などに細菌が入り込むことで感染します。
感染経路は?
接触感染で感染します。引っ掻いた手を介して全身に膿痂疹が広がっていきます(火事の火の粉が飛び火することに似ているので「とびひ」と言われます)。
症状は?
黄色ブドウ球菌が原因の場合、水疱性膿痂疹(水ぶくれができたり、膿がたまったりします)となります。水疱性膿痂疹がやぶれると、びらんとなります。明らかな水ぶくれがないこともあります。悪化すると、酷い火傷のような皮膚症状を呈し(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)、入院加療が必要なこともあります。A群β溶血性レンサ球菌の場合、痂皮性膿痂疹(膿がたまって、厚いかさぶたができます)となります。
診断は?
臨床症状から診断することがほとんどです。必要に応じて血液検査や培養検査などを行います。
治療は?
スキンケアや抗生剤の軟膏を塗布などで治療します。広範囲に広がって膿痂疹を認める場合は、抗生剤の内服治療を行います。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは?
かゆみのある湿疹が、良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返す病気です。
(1歳以上なら6ヵ月以上(1歳未満なら2ヶ月以上)症状が継続している状態を「慢性的」と判断します)
何が問題なの?
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が低下してしまっていることが問題です。このため、外部からの刺激が簡単に皮膚の中に入ってきてしまい、様々な炎症が起こります。
悪化させてしまう理由は?
細菌(黄色ブドウ球菌)、ダニ・カビ・ほこり、ペット、汗、ストレスなどがアトピー性皮膚炎の悪化させる要因です。
アトピー性皮膚炎の治療は?
皮膚のバリア機能を回復させることが重要です。
- スキンケア (皮膚を清潔な状態に保つことが非常に重要です。スキンケア方法は医療機関でご相談ください)
- 悪化要因の除去 (掃除することが大切です(ダニ対策・カビ対策・ペット対策))
- 薬物療法(ステロイド外用薬、免疫抑制外用薬)
以上の3つの治療を組み合わせて治療し、皮膚のバリア機能を回復させます。
じんましん(蕁麻疹)
じんましん(蕁麻疹)ってどんな病気?
蕁麻疹とは、かゆみを伴う一過性に膨らんだ発疹(膨疹)で、様々な形の発疹(膨疹)が出現します。これらの発疹(膨疹)は数十分~数時間で消退することがほとんどです。
20%以上のお子さんが蕁麻疹を1回は経験すると報告されています。
何が原因なの?
食べ物が原因と思われることが多いのですが、食べ物(刺激誘発型蕁麻疹)よりは感冒などの一過性の感染症による蕁麻疹(特発性蕁麻疹)の方が多いとされています。
入浴時などの温熱刺激がきっかけとなって発疹(膨疹)が出現することもあります。
ちょっとわかりにくいかと思いますが…蕁麻疹は下記のように分類されます。
- 特発性蕁麻疹(原因がよくわからない蕁麻疹)
- 急性蕁麻疹:発症して1ヶ月以内の蕁麻疹
- 慢性蕁麻疹:発症して1ヶ月以上続いている蕁麻疹
- 刺激誘発型蕁麻疹(食べ物や薬、機械的な刺激などで誘発される蕁麻疹)
- 血管性浮腫
- 蕁麻疹関連疾患
蕁麻疹はいつ消える?
食べ物などの蕁麻疹の原因となるものがわかっているもの(刺激誘発型蕁麻疹) は除去/接触を回避することで改善が期待できます。原因がよくわからない特発性蕁麻疹の場合(こどもの場合、慢性蕁麻疹は少ないと言われています)、急性蕁麻疹は、発症後1週間以内に75%程度のお子さんが改善すると報告されています。慢性蕁麻疹は、1年後に20%が改善し、5年後では70%のお子さんが改善すると報告されています。
治療は?
かゆみが強い場合や全身にじんましんを認める場合などは、抗ヒスタミン内服治療などを検討することがあります。外用薬(塗り薬)はあまり効果はないとされています。
発疹(膨疹)が限局的でかゆみが弱い場合は、まずは保冷剤などを使用して冷やすことでかゆみが軽減する可能性があります。その後も改善が乏しい場合は医療機関でご相談ください。
水いぼ(伝染性軟属腫)
原因は?
伝染性軟属腫ウイルスというウイルスが原因です。
感染経路は? 潜伏期間は?
直接的な接触感染で感染します。潜伏期間は 2~7週間です。
プールに入ってはダメ?
プールに入っても大丈夫です。ただし、タオル・ビート板・浮き輪などを共用するこは『不可』です。
肌と肌が非感染児と接触すると他の子に感染してしまう可能性があり、十分な注意が必要です。
症状は?
1~5mm大の光沢のあるいぼ(丘疹)を認めます(いぼの中央に窪みがあることがあります)。痒みを伴うことがあります。
水いぼの内部に白い粥状内容物が詰まっていますが、強くつまむと内容物が排出されます。この内容物にウイルスが存在し、水いぼを引っ掻いてしまうことでどんどんと病変が拡大していきます。 爪を短く切って清潔にし、水いぼを引っ掻かないようにすることが重要です。
診断は?
臨床症状により診断します。
治療は?
特異的な治療法はありません。下記の治療法を考慮します。 各治療後4ヶ月程度、新しい水いぼが出現しなければ、ほぼ治癒したものと考えます。
- 何もしない(発症後 6ヵ月~5年程度経過すると自然に治癒する) : 治癒するのに時間がかかってしまいます。
- ピンセット(トラコーマ鑷子)などを用いて、一つずつ摘除する方法 : 痛みを伴います。取り除いた痕が残ってしまう可能性もあります。
- 液体窒素療法 : 痛みあるいは痒みを伴います。 取り除いた痕が残ってしまう可能性もあります。
- 内服加療(ヨクイニン(漢方薬)) : 長期間の内服が必要になる可能性があります。
いちご状血管腫(乳児血管腫)とは?
皮膚表面や内部にできる「赤あざ」の一種です。見た目が赤く、いちごのように見えることから「いちご状血管腫」と呼ばれます。未熟な毛細血管が増殖することで現れる良性の腫瘍です。女の子に多いとされています(男の子:女の子 = 1:3~9)。また、日本人での発症頻度は0.8~1.7%とされており(100人に1人程度)、決して少なくない病気です。
どんな経過になる?
生後2週頃より現れ、生後5~7週で急速に大きくなります。生後5ヵ月までにはピーク時の80%の大きさに達すると報告されています。
多くの場合(90%以上)、5~7歳までに数年かけて少しずつ赤みは消えていきますが、多くの場合、痕(瘢痕)などの後遺症が残ります。ある報告(いちご状血管腫 184個を対象に調べたデータ)によると、毛細血管拡張(84%)、皮膚の萎縮(33%)、皮膚のたるみ(16%)、瘢痕(12%)を認めたとされています。報告されているデータによって差はありますが、軽症の後遺症を含めると25~68%で後遺症が残ると言われています。
どんな治療法がある?
前述のように無治療でも数年かけて赤みは消えていくので、何もしない(自然退縮を待つ)という選択肢もあります。
自然退縮を待つという治療法以外には、薬物療法(へマンジオルシロップ、ステロイド療法(本邦では承認外治療)など)、手術療法、レーザー治療、塞栓/硬化療法、液体窒素療法、持続圧迫療法などがあります。現時点では(血管腫・血管奇形・リンパ管奇形 診療ガイドライン2017)、ヘマンジオルシロップによる薬物療法が治療の第一選択肢として推奨されています。当院では、ヘマンジオルシロップによる薬物治療を行うことが可能です。
乳児脂漏性皮膚炎(乳児脂漏性湿疹)
赤ちゃんの頭皮に鱗みたいな黄色の湿疹があります。病気ですか?
積極的な治療が必要な病気ではありません。
ママのホルモンの影響を受け、赤ちゃん達の皮脂の分泌は盛んです。皮脂の分泌が多い頭部・顔・わきの下・首まわり等に、生後2~4週頃より黄色く油っぽいかさぶた状のもの(痂皮(乳痂ともいいます))が、うろこ状につくことがあります。これを乳児脂漏性皮膚炎(乳児脂漏性湿疹)と呼びます。皮膚の常在真菌(マラセチア等)も乳児脂漏性皮膚炎を悪化させる一因とも言われています。
治療は?
適切なケアによって 2ヶ月程度で改善します。
一日一回は入浴し、固着している黄色い痂皮にワセリンやオリーブ油などを塗り、30分くらい浸軟させてから、よく泡立てた石鹸で優しくしっかり洗ってください。必要に応じて非ステロイド軟膏やステロイド軟膏を使用することもあります。
皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹
どんな病気?
皮膚表面の皮脂分泌が不足し、角質水分量が減少して、皮膚が乾燥(乾燥肌)してしまう病気です。
乾燥肌の状態を皮脂欠乏症と呼びますが、悪化して湿疹を伴うようになると皮脂欠乏性湿疹と呼ばれます。
原因は?
出生直後は、ママからのホルモンの影響で皮脂が過剰に出るせいで、様々な肌トラブルが生じます(新生児ざ瘡など)。
しかし、生後6ヵ月以降はママからのホルモンの影響が消えて、逆に皮脂の分泌が急に減ってしまいます。
このため、生後6ヵ月以降は乾燥肌(皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹)になってしまいます。
治療は?
低湿住環境の改善やスキンケアを行うことが重要です。
冬など乾燥しやすい時期は、加湿器などを使用して適度な湿度を保ってください。
医療機関で処方される保湿剤(ヘパリン類似物質など)や市販の保湿剤を用いて保湿してください。
痒みのある湿疹が2ヶ月以上続く場合は、アトピー性皮膚炎の可能性があるので医療機関でご相談ください。
ニキビ(尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう))
原因は?
ニキビは毛穴にできる炎症が原因です。
毛穴には3種類(毛が生える毛穴・産毛しか生えない毛穴・皮膚を保護する皮脂が出る毛穴(脂腺性毛包))あります。ホルモンなどの影響により毛穴(脂腺性毛包)で皮脂分泌が活発になること、古い角質により毛穴(脂腺性毛包)が塞がること、毛穴(脂腺性毛包)の中でニキビの原因菌(アクネ菌)が増殖することがニキビの主な原因です。
症状は?
炎症の有無で大きく2つに分類され、症状が異なります。
- 白ニキビ: 炎症のないニキビです。皮脂により毛穴がつまった状態です。
- 赤ニキビ・黄ニキビ: 炎症のあるニキビです。アクネ菌による炎症によって発赤したり、膿が貯留したりします。
治療は?
下記の外用薬を用いて治療します。必要に応じて抗菌薬の内服加療を検討します。
- 抗菌外用薬(ダラシンTゲル/ローション, アクアチムクリーム/ローションなど)
- アダパレン(ディフェリンゲル):毛穴の角化異常を是正して皮脂の分泌をスムーズにする効果があります。
- 過酸化ベンゾイル(ベピオ):毛穴の閉塞に対するピーリング効果とアクネ菌に対する抗菌作用があります。
- アダパレン/過酸化ベンゾイル配合剤(エピデュオ)
ニキビの加療には時間を要することが多く(治療効果を判定するのに3ヶ月程度を要します)、ニキビ痕を残さないために早めに治療することが大切です。
(外用薬使用による副作用が問題になる場合・嚢腫ある場合・抗菌薬内服治療に反応が不十分な場合などは皮膚科にご紹介させて頂くことがあります)
虫さされ・虫による皮膚炎
症状は?
さされた虫の種類によって症状が異なります。
蚊による皮膚炎では、大きく赤く腫れたり、水疱が生じることもあります。蜂やムカデでは、一時的な強い痛みと赤く腫れるのみで軽快することもありますが、刺された直後に重度のアレルギー症状(蕁麻疹・嘔吐・呼吸困難など)を認めることもあります。
治療は?
蜂やムカデに刺された直後の痛みには保冷剤などによる局所冷却が有効とされています。
アレルギー反応による痒みを伴う場合は、ステロイド外用薬を使用します。炎症が強い場合は、抗ヒスタミン薬・ステロイド内服薬を併用することもあります。重度のアレルギー症状を認めた場合は、アドレナリン投与が必要であり、速やかに医療機関を受診してください。
虫よけ製品のおススメは?
主成分:イカリジン と記載されている製品がおススメです。
イカリジン含有の虫よけ製品は、年齢制限や塗る回数の制限がありません(イカリジン15%濃度製剤を使用すると6~8時間有効です)。
(ディードが主成分の虫よけ製品は、6ヵ月未満のあかちゃんには使用できず、年齢に応じて使用回数の制限があるので注意が必要です)